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アメリカのイエメン介入:主な軍事作戦と最新状況

背景と米国の関与の開始

イエメンに対するアメリカの軍事的関与は、2001年の同時多発テロ以降、本格化しました。アメリカ政府は当初、国際テロ組織アル=カーイダ(AQAP)の脅威に対処するため、イエメン政府の承認のもと無人機(ドローン)による空爆作戦を開始しました (Drone strikes in Yemen - Wikipedia)。2002年11月に初めてCIAの無人機による標的殺害が実施され、以降AQAP幹部を狙った空爆が継続しています (Drone strikes in Yemen - Wikipedia)。2015年にはイエメンでフーシ派(フーシ派運動(アンサール・アッラーフ))が首都サナーを制圧し、ハーディ政権が崩壊すると、隣国サウジアラビアが主導する多国籍軍が介入を開始しました。アメリカも同年以降、サウジ主導連合に情報提供や空中給油、武器供与などで軍事支援を行い、事実上イエメン内戦に関与するようになりました (Raid on Yakla - Wikipedia)。これが「本格的な軍事活動」の始まりと言え、米軍は対テロ作戦イエメン内戦への介入という二つの軸で軍事行動を展開していきました。

無人機攻撃による対テロ作戦

アメリカは2000年代以降、一貫してイエメン国内のAQAPや「イスラム国(IS)」系武装勢力を標的に無人機攻撃を行ってきました。とりわけオバマ政権期には作戦が拡大され、2011年9月には米国生まれの過激派指導者アンワル・アル=アウラキが無人機攻撃で殺害されています (Drone strikes in Yemen - Wikipedia)。2009年以降の空爆によりAQAPの指導者ナセル・アル=ウハイシ(2015年死亡)やカシム・アル=レイミ(2020年1月に米空爆で死亡)など主要人物が次々排除されました。またトランプ政権下の2017年にはイエメンでの空爆・無人機攻撃の回数が大幅に増加し、AQAPやIS拠点への攻撃が強化されました (Raid on Yakla - Wikipedia)。例えば2016年には米軍とUAE特殊部隊がAQAP監視のためイエメン南部に展開し、同年に少なくとも8回の無人機攻撃がアルバイダ州で実施されています (Raid on Yakla - Wikipedia)。こうした継続的な対テロ作戦の結果、2002年から現在に至るまでに延べ1,300~1,700名規模の武装勢力構成員が殺害されたと推計されます。一方で一般市民の犠牲も小さくなく、独立機関の集計では米無人機攻撃により少なくとも116~225名の民間人が死亡したとされています (Drone strikes in Yemen - Wikipedia) (Drone strikes in Yemen - Wikipedia)。例えば2012年9月には無人機による誤爆で13人の民間人が死亡し、2013年12月には結婚式の行列が誤って攻撃され多数の死傷者が出る事件も起きました。こうした対テロ無人機作戦は一定の成果を上げたものの、付随的な民間人被害について国際人権団体などから強い批判を招いています。

空爆・ミサイル攻撃による介入

アメリカ軍は有人・無人機を含む空爆戦力や艦艇からのミサイル攻撃によっても、たびたびイエメンでの軍事行動を行っています。2015年以降、サウジアラビア主導の連合軍がフーシ派支配地域に対し大規模な空爆キャンペーンを展開しましたが、アメリカは直接爆撃を行わない代わりに後方支援として情報提供や空中給油、精密誘導爆弾の供与を行い、連合国の空爆作戦を支援しました (Raid on Yakla - Wikipedia)。しかし2016年10月、紅海を航行中の米海軍駆逐艦USSメイソンがフーシ派支配地域から複数回の対艦ミサイル攻撃を受ける事件が発生すると、オバマ政権は初めてフーシ派への直接軍事行動に踏み切りました (U.S. military strikes Yemen after missile attacks on U.S. Navy ship | Reuters)。同年10月13日、米海軍駆逐艦ニッツェからトマホーク巡航ミサイルが発射され、フーシ派が使用していた紅海沿岸部の3か所のレーダーサイトを破壊しています (U.S. military strikes Yemen after missile attacks on U.S. Navy ship | Reuters) (U.S. military strikes Yemen after missile attacks on U.S. Navy ship | Reuters)。この攻撃はイエメン内戦への米国の初の直接介入であり、自国艦艇防護のための限定的対処と説明されました (U.S. military strikes Yemen after missile attacks on U.S. Navy ship | Reuters)。その後もしばらく米軍は直接的な空爆を控えていましたが、フーシ派が紅海で商船や友好国の艦船への攻撃を激化させたことを受け、2024年には情勢が変化します。

2024年末、フーシ派はイスラエルとパレスチナのガザ紛争への報復として「イスラエル関連の船舶」への攻撃を宣言し、実際に同年11月から翌1月にかけて紅海を航行する100隻以上の商船がミサイルや無人機による襲撃を受け、2隻が沈没、船員4名が死亡する事態となりました (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)。国連安全保障理事会も2024年12月にフーシ派の船舶攻撃を非難する決議を採択し、米英両政府は紅海の航行安全確保のため共同軍事行動に乗り出します (US–UK airstrikes on Yemen - Wikipedia)。バイデン米大統領の下、「オペレーション・ポセイドン・アーチャー」と呼ばれる対フーシ派空爆作戦が2024年1月12日に開始され、米英両軍(豪州・カナダなども支援参加)がフーシ派のミサイル・ドローン拠点に対する一連の空爆・巡航ミサイル攻撃を実施しました (US–UK airstrikes on Yemen - Wikipedia) (US–UK airstrikes on Yemen - Wikipedia)。米政府関係者は「フーシ派の攻撃能力を低下させること」が目的で、指導者暗殺ではないと説明しています (US–UK airstrikes on Yemen - Wikipedia)。フーシ派側の発表によれば、この作戦により2024年1月までに米英軍による空爆が延べ931回行われ、106人が死亡・314人が負傷したとされています (US–UK airstrikes on Yemen - Wikipedia)。バイデン政権下の対フーシ派攻撃は限定的でしたが、2025年にトランプ大統領が再就任すると、イエメンでの米軍作戦は一層大規模なものとなりました (米がイエメンの複数地域空爆、少なくとも10回とフーシ派メディア | ロイター)。

フーシ派に対する軍事行動の激化(2025年)

(U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)2025年4月18日、紅海沿岸のラース・イーサ燃料港に対する米軍空爆の直後の様子。破壊された貯蔵タンクや燃料輸送車両が確認できる。

2025年3月、トランプ大統領(第2次政権)はフーシ派に対する大規模な軍事攻撃を指示し、本格的な空爆キャンペーンを開始しました (米がイエメンの複数地域空爆、少なくとも10回とフーシ派メディア | ロイター)。これは紅海やアデン湾で相次ぐフーシ派の商船攻撃への報復措置と位置付けられ、トランプ政権発足後中東で最大規模の軍事作戦となりました (米がイエメンの複数地域空爆、少なくとも10回とフーシ派メディア | ロイター)。3月15日以降、米中央軍(CENTCOM)はフーシ派支配下のサアダ州、フダイダ州、首都サナーなどに対して連日の空爆を実施し、わずか数週間で200回以上の攻撃を行ったとホワイトハウスが発表しています (Houthis say U.S. strikes killed 4, bombing video suggests higher overall death toll in Yemen | PBS News)。例えば4月6日には反政府武装勢力の拠点とされた首都サナー市内の建物が空爆され、フーシ派当局の発表で少なくとも4人が死亡、16人が負傷しました (Houthis say U.S. strikes killed 4, bombing video suggests higher overall death toll in Yemen | PBS News) (Houthis say U.S. strikes killed 4, bombing video suggests higher overall death toll in Yemen | PBS News)。同日、北部サアダ州でも商店(フーシ派は「太陽光パネル店」と主張)に対する爆撃で2人が死亡しています (Houthis say U.S. strikes killed 4, bombing video suggests higher overall death toll in Yemen | PBS News)。

4月上旬には、フーシ派幹部らの集会を狙ったとみられる米軍の空爆も行われました。トランプ大統領自身が4月8日に白黒の空撮映像をSNSに公開し、「攻撃命令を受け集結したフーシ派戦闘員70人以上」を一度の爆撃で殲滅したと主張しています (Houthis say U.S. strikes killed 4, bombing video suggests higher overall death toll in Yemen | PBS News) (Houthis say U.S. strikes killed 4, bombing video suggests higher overall death toll in Yemen | PBS News)。フーシ派側は当初この攻撃について沈黙していましたが、後に「フダイダ県での親族訪問の集まりが攻撃され多数が死傷した」と認め、映像に映る犠牲者は民間人だと反論しました (Houthis say U.S. strikes killed 4, bombing video suggests higher overall death toll in Yemen | PBS News) (Houthis say U.S. strikes killed 4, bombing video suggests higher overall death toll in Yemen | PBS News)。この空爆では数十名規模の死者が出たと推定され、米当局者も「約70人の戦闘員を殺害した可能性がある」と示唆しています (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)。フーシ派は当該攻撃について高位指導者の死傷には言及せず、被害者は部族関係者だとしています (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)。専門家は、フーシ派がここまでの大規模損害を公式に認め映像を公開したのは極めて異例であり、実際には軍や治安部門の関係者が含まれていた可能性が高いと指摘しています (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)。いずれにせよ、この一連の攻勢によってフーシ派は創設以来の深刻な打撃を受けたとみられます。

2025年4月中旬には米軍の攻撃はピークに達し、民生インフラへの被害も発生しました。4月18日未明、フーシ派支配下の紅海沿岸に位置するラース・イーサ燃料貯蔵港が米軍の空爆を受け、燃料タンクやタンカー車両が炎上しました (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News) (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)。フーシ派の報道によれば、この攻撃で74人が死亡、171人が負傷し (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News) (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)、救助隊員や救急隊員も多数含まれていたといいます (US air strikes kill 80, injure 150 in Yemen | Houthis News | Al Jazeera) (US air strikes kill 80, injure 150 in Yemen | Houthis News | Al Jazeera)。現場の映像には港湾施設で散乱する遺体や破壊されたタンクが映し出され、フーシ派は「何十年もイエメン国民に奉仕してきた重要な民生用施設への不当な攻撃だ」と非難しました (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)。米中央軍は「イラン支援下のフーシー・テロリストから燃料収入源を奪うための攻撃であり、イエメン国民を害する意図はない」と声明を出し、人道目的ではなく軍事経済インフラを狙ったものであったと説明しています (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News) (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)。実際、この港はフーシ派支配地域への燃料供給の要衝であり、専門家は「攻撃によりフーシ派支配下地域の日常生活に深刻な影響が出る可能性がある」と指摘しています (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News) (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)。

一連の米軍攻撃に対し、フーシ派も報復を試みています。4月18日のラース・イーサ港空爆の数時間後、フーシ派はイスラエルに向け弾道ミサイルを発射しましたが、イスラエル軍によって迎撃され、テルアビブなどで警報が鳴りました (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)。また同日、フーシ派は米無人偵察機MQ-9リーパー1機を撃墜したと発表し、米当局者も撃墜を認めています (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)。さらにフーシ派指導部は「アメリカおよびイスラエルと交戦状態にある」と宣言し、4月下旬にはイエメン沖に展開する米空母打撃群に対するドローン・ミサイル攻撃を敢行したと主張しました (US air strikes kill 80, injure 150 in Yemen | Houthis News | Al Jazeera) (US air strikes kill 80, injure 150 in Yemen | Houthis News | Al Jazeera)(米側は被害を認めていません)。サナー市内では米国とイスラエルの攻撃に抗議する大規模デモも発生し、フーシ派軍事報道官ヤヒヤー・サリー准将は「米国の侵略が続けば、さらなる報復攻撃と衝突が起こるだけだ」と演説しています (US air strikes kill 80, injure 150 in Yemen | Houthis News | Al Jazeera)。このように米国とフーシ派の直接対決がエスカレートする中、戦況は国際的な米・イラン間の緊張や中東情勢とも絡み合いながら推移しています。

特殊部隊による作戦行動

米軍は無人機や空爆だけでなく、地上での特殊作戦もイエメンで遂行してきました。代表的なものとして2014年12月の人質救出作戦があります。この作戦ではAQAPに拉致されていた米国人ジャーナリストの救出を目的に、米海軍特殊部隊SEALsがイエメン南部シャブワ州のAQAP拠点を急襲しました。しかし人質のルーク・サマーズ氏と南アフリカ人の教師は、突入の直前にテロリストによって殺害され、救出は失敗に終わりました (Luke Somers - Wikipedia) (Luke Somers - Wikipedia)。この悲劇を受け、当時のオバマ大統領はAQAPの残虐性を非難するとともに、テロとの戦いを決意する声明を出しています (Luke Somers - Wikipedia)。

トランプ政権に入ると対テロ特殊作戦も加速し、2017年1月29日には中部アルバイダ州ヤクラク地区の村落に対する大規模な奇襲攻撃が行われました(ヤクラク奇襲作戦) (Raid on Yakla - Wikipedia)。この作戦はオバマ政権末期に計画され、トランプ大統領就任9日目に承認・実行されたもので、AQAPの指導者カシム・アル=レイミを標的としていました (Raid on Yakla - Wikipedia)。米海軍シールズとUAE軍コマンド部隊が参加し、AQAP戦闘員14名の殺害に成功したものの、作戦は混乱を極め民間人にも犠牲が出ました。現地報道によれば女性や子供を含む10~30名の住民が巻き添えとなり死亡し、死亡者の中には米国出身の過激派説教師アンワル・アル=アウラキの8歳の娘(ナワールちゃん)も含まれていました (Raid on Yakla - Wikipedia)。さらに米軍側も海軍特殊部隊員1名(ウィリアム・“ライアン”・オーエンズ一等兵曹)が戦死し、作戦中に墜落・破壊されたMV-22オスプレイ輸送機1機を含め大きな損害を被りました (Raid on Yakla - Wikipedia)。このヤクラクの戦闘は「最初から危険が高く、結果も高コストだった」と評され、準備不足の強行策ではなかったかと米国内で論争を巻き起こしました (Raid on Yakla - Wikipedia)。

その後も米軍はイエメンにおいて限定的な地上戦を継続しています。2017年5月23日にはイエメン中部マリブ州で米陸軍特殊部隊によるAQAP拠点への急襲が行われ、戦闘員7名を殺害する成果を上げました ( Pentagon Spokesman Describes U.S. Raid in Yemen > U.S. Central Command > News Article View ) ( Pentagon Spokesman Describes U.S. Raid in Yemen > U.S. Central Command > News Article View )。米国防総省によれば、この奇襲はマリブ州における初の米地上作戦であり、AQAPの会合場所を急襲することで対外攻撃計画の妨害を狙ったものです ( Pentagon Spokesman Describes U.S. Raid in Yemen > U.S. Central Command > News Article View ) ( Pentagon Spokesman Describes U.S. Raid in Yemen > U.S. Central Command > News Article View )。AC-130Uガンシップによる空中支援も実施され、民間人の巻き添えは生じなかったと報告されています ( Pentagon Spokesman Describes U.S. Raid in Yemen > U.S. Central Command > News Article View ) ( Pentagon Spokesman Describes U.S. Raid in Yemen > U.S. Central Command > News Article View )。米軍はまた2018年以降もイエメン政府軍やUAE軍と協力し、南部アビアン州やハドラマウト州でAQAP残存勢力の掃討を支援したとされています。2020年1月にはAQAP指導者アル=レイミ容疑者が米特殊部隊の作戦で殺害され、組織壊滅に大きく近づく成果もありました。こうした特殊部隊の作戦行動は規模こそ小さいものの、AQAPの弱体化に一定の寄与をしてきたと考えられています。

民間人への影響と被害状況

(Houthis say U.S. strikes killed 4, bombing video suggests higher overall death toll in Yemen | PBS News)2025年4月、イエメン北部サアダ市での米軍空爆によって破壊された建物。空爆当時「太陽光発電設備の店」が入居していたと報じられた。

20年以上に及ぶイエメンでの戦闘は、民間人に深刻な被害と人道危機をもたらしました。国連の推計では、2021年末までにイエメン内戦による累計死者は37万7千人に達し、そのうち直接の戦闘による死者が約15万人、残りは戦争による飢餓や病疫が原因とされています (CAAT - The war on Yemen’s civilians)。直接的な戦闘被害としては、民間人の死者は約1万5千人に上り、その6割近くはサウジ主導連合による空爆によるものと分析されています (CAAT - The war on Yemen’s civilians) (CAAT - The war on Yemen’s civilians)。連合軍の空爆はしばしば結婚式や市場、葬儀会場など民間人が多数集まる場を直撃し、大量虐殺に等しい惨事を引き起こしました (CAAT - The war on Yemen’s civilians)。例えば2018年8月9日、北部サアダ県ダハヤンでスクールバスが空爆に遭い児童40人前後が死亡する事件が発生しています。このバス爆撃では少なくとも26人の児童が即死し、19人以上の子供が負傷しました (Yemen: Coalition Bus Bombing Apparent War Crime | Human Rights Watch)。現場からは米国製のレーザー誘導爆弾の破片が見つかっており、米国が供与した兵器による攻撃だったことが判明しています (Yemen: Coalition Bus Bombing Apparent War Crime | Human Rights Watch)。国際人権団体は「学校や病院、結婚式などへの度重なる無差別爆撃は明白な戦争犯罪であり、関与する全ての当事者が責任を問われるべき」と非難しました (Yemen: Coalition Bus Bombing Apparent War Crime | Human Rights Watch)。

米軍自身の軍事作戦においても、民間人の犠牲は避けられていません。前述の2017年1月のヤクラク襲撃では女性や子供を含む多数の住民が巻き添えとなり、8歳の少女まで犠牲となりました (Raid on Yakla - Wikipedia)。無人機攻撃による「誤爆」も各所で報告されており、2013年には結婚式の車列が誤って標的とされ親族一同が惨禍に見舞われました。また2025年の米軍空爆キャンペーンでも、フーシ派の発表によれば3月中旬からの1か月間で民間人を含む69人が死亡したとされ (Houthis say U.S. strikes killed 4, bombing video suggests higher overall death toll in Yemen | PBS News)、4月18日のラース・イーサ港攻撃では救助関係者を含む多数の労働者が犠牲となっています (US air strikes kill 80, injure 150 in Yemen | Houthis News | Al Jazeera) (US air strikes kill 80, injure 150 in Yemen | Houthis News | Al Jazeera)。米中央軍は「民間人被害は意図しないものであり最小化に努めている」と強調していますが (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)、フーシ派は「米軍は民生インフラを狙って無差別攻撃を行っている」と糾弾しています (US air strikes kill 80, injure 150 in Yemen | Houthis News | Al Jazeera)。

戦闘による直接の死傷のみならず、人道危機も深刻です。インフラ破壊と経済封鎖により約1700万人が食糧不安に陥り、コレラの大流行や医療崩壊で多くの子供が命を落としました。国連はイエメン情勢を「世界最悪の人道危機」と位置付け、人道支援と停戦の必要性を繰り返し訴えています。特に米軍が直接関与する攻撃では国際社会の注目も高く、民間人への被害拡大に対する批判や懸念が各国から表明されてきました (Yemen: Coalition Bus Bombing Apparent War Crime | Human Rights Watch)。

国際的な反応

イエメンでの米国の軍事行動に対し、国際社会からは様々な反応が寄せられています。欧米諸国の世論や議会では、サウジ主導連合による空爆での民間人犠牲の増大に懸念が高まり、米英仏などによる武器供与の継続に批判が集まりました (Yemen: Coalition Bus Bombing Apparent War Crime | Human Rights Watch)。人権団体や国連専門家は「米国や欧州諸国は民間人虐殺に加担している」として武器輸出停止を求め、実際にドイツや北欧諸国は一時サウジへの武器輸出を凍結する措置を取っています。またアメリカ国内でも2019年に議会がイエメンでの軍事関与停止を要求する超党派決議を採択しましたが、当時のトランプ大統領が拒否権を行使し、米国の関与は継続されました (Trump vetoes measure to end US involvement in Yemen war) (Trump vetoes resolution on ending U.S. role in Yemen civil war)。バイデン大統領は2021年にサウジの「攻勢作戦」への支援停止を表明しましたが (Saudi-led airstrikes in Yemen have been called war crimes. Many relied on U.S. support. - Washington Post)、実際には契約済みの兵器整備支援などは継続されており、完全な関与終了には至りませんでした (Saudi-led airstrikes in Yemen have been called war crimes. Many relied on U.S. support. - Washington Post)。

他方、フーシ派を支援するイランや友好関係にある中国・ロシアなどは、一貫して米国の軍事介入を批判しています。イラン政府は2016年の米軍によるレーダーサイト攻撃の際、「主権侵害であり地域の緊張を高める行為だ」と非難し、同時期にイラン海軍の艦艇をバブ・エル・マンデブ海峡周辺に派遣する動きを見せました (U.S. military strikes Yemen after missile attacks on U.S. Navy ship | Reuters)。2025年の米軍対フーシ派作戦についても、テヘランは「イエメンへの一方的な侵略」として強く糾弾し、フーシ派への支援継続を表明しています。中国もアメリカの動きを懸念する姿勢を示しています。米国務省が「中国企業がフーシ派の船舶攻撃を衛星画像提供で支援している」と名指しで非難した際、中国外務省は事実関係への関与を否定しつつ「誰が地域の平和と安定のために対話を促進し、誰が制裁と圧力で緊張を高めているのか、世界は見ている」と反論しました (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News) (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)。中国側は紅海情勢のエスカレーションに対し対話による解決を訴えており、アメリカに自制を促す立場を取っています (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News)。

国連もまた、イエメン紛争の解決に向けて積極的に動いてきました。2018年末のストックホルム合意や2022年の一時停戦合意など、国連特使の仲介で停戦と和平交渉の努力が続けられました。米軍による大規模攻撃が始まった2025年3月以降、国連事務総長は直ちに民間人保護の遵守自制を各当事者に呼びかけています。ヨーロッパ連合(EU)も「軍事的解決ではなく交渉による包括的和平」を求める声明を発表し、イエメンの人道状況悪化に深い懸念を示しました。日本政府は公式には米国のテロ対策行動を理解するとしつつも、人道支援の拡充や停戦合意への支持を表明しています。

総じて、アメリカによるイエメンでの軍事作戦はテロ組織の弱体化や航路の安全確保に一定の成果を上げる一方、民間人への大きな犠牲と人道危機を伴い、国際社会から賛否入り混じった反応を招いています。イエメン情勢は依然予断を許さず、米国と地域諸国、そして国際社会がこの紛争をいかに終結に導くかが引き続き問われています。

参考情報: 米国防総省や国連、信頼できる報道機関(AP通信、ロイター、CNN、アルジャジーラ等)の報道を基に作成 (U.S. military strikes Yemen after missile attacks on U.S. Navy ship | Reuters) (CAAT - The war on Yemen’s civilians) (U.S. strikes Yemen oil port in deadly escalation of Trump’s campaign against the Houthis | PBS News) (Houthis say U.S. strikes killed 4, bombing video suggests higher overall death toll in Yemen | PBS News) (Yemen: Coalition Bus Bombing Apparent War Crime | Human Rights Watch)。

投稿日時: 12/18/57267, 10:40:00 PM

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